北京堂鍼灸横浜を開業してからも、師匠である浅野周先生の治療院に毎月通っています。常に進化する北京堂の鍼灸技術の向上の為の勉強が主な目的です。それと、自分自身の体のメンテナンスのためです。

北京堂鍼灸横浜へ治療に来た患者さんにはお話ししたこともあるのですが、実は私も昔は酷い頭痛持ちで、痛み止めであるロキソニンを手放せない時期がありました。当時は医者から処方されている薬ということもあり、ロキソニンが腎臓に良くないことなど知らず、薬害の事も考えることすら無く服用していました。取りあえず飲むと手っ取り早く痛みが消えるので常備していました。

頭痛が酷いときは、毎日のように繰り返しズキズキしたり、ギューッと締め付けられる痛みに襲われ、何をするにも気持ちが折れそうでした。いま考えても、かなり辛かったです。

弟子入りしたての頃から、浅野先生に治療をしてもらうようになりました。初めての治療を受けた時は、かなりの衝撃を受けました。(多分、私が治療する患者さんも同じような印象を持つのでしょう。)浅野先生の治療は、私が今まで受けた、いわゆる日本鍼灸のものと懸け離れていました。日本鍼灸は、痛くないのがその一つの特徴です。

北京堂の鍼は、まさに「痛い鍼」でした。

当初、私の首の筋肉は硬かったので、一本一本鍼を刺されるたびにギュウギュウ鍼の刺さる音が聞こえてくるくらいでした。

「硬くて鍼が入りにくいね。あんたの首はけっこう悪いね。」

浅野先生はそう言いながら、次から次へと刺鍼していきました。そのどれもが正確に筋肉の奥のコリを捉えていました。針を刺すごとに電気ショックのようにビリビリ痺れたり、筋肉が奥から割れるような感覚がありました。正直なところ、まだ終わらないのか、あと何本刺すのだろうか、と思っていました。

「かなりズキーンときてるでしょ?」

顔は見えなかったが、ニコニコしているかのような口調で話す浅野先生に返事すらできませんでした。

ですが日頃の辛さに比べると、一時の鍼の痛みなど大したことありませんでした。

 

北京堂の鍼は、頭痛の治療なら頭痛のような響きを感じ、腰痛なら腰に響くような感覚があります。辛い症状が再現されるような感覚です。この響きは症状が悪化していて辛いときほど強烈で、症状が改善していくにつれ穏やかな響きに変わっていきます。

古代から伝わってきた伝統的な鍼灸治療においては、この「響く感覚」は鍼が病巣部に伝導した合図でもあり、響かない鍼は効かないとも考えられています。

私も頭痛の酷いころは鍼の響きを強烈に大きく感じましたが、最近は、鍼がツボにはまった感じで穏やかに心地よく響く感じで気持ちがいいです。

。。。とは言っても最初はかなり強烈な鍼で、「大丈夫かな」と思う時もありました。きっと同じような想いをしている患者さんも多いのではと思います。

しかし、途中で諦めてしまうことなく治療を続けていただきたいと思います。その昔、この私も一人の患者として師匠の鍼を受け、痛みに耐えたおかげで(?)、現在はすっかり良くなり、自分が頭痛持ちだった事をウソのように忘れてしまうくらいです。

それ以来、師匠のところに勉強に来たときはメンテナンスとして鍼を受けています。おかげでここ数年、頭痛とは全く無縁になりました。

 

これまでに浅野先生が何人も頭痛の患者さんを治療するところを見学してきました。元々は鍼灸医学は中国から日本に伝えられたのですが、浅野先生はその中国最古の医書である黄帝内経をはじめ様々な鍼灸医書を翻訳していて、鍼灸医療を志す者に貢献しているのです。

浅野先生は頭痛や肩こり腰痛や股関節の痛み顎関節症など、様々な症状を持つ患者さんの治療を、理論的な説明つきで実践して見せてくれるのです。新米医師がベテラン医師のもとで学ぶインターンシップみたいなかんじです。

このインターンシップは北京堂鍼灸横浜を引き継いだ後も、日頃に自分が行っている鍼治療についての知識や技術の確認ができ、患者さんにより効果的な治療技術を提供するためのヒント、、、、、がありとても勉強になるのです。

おかげで今では私も頭痛の治療が得意になり、頭痛から解放された患者さんの喜ぶ顔を見るのが好きになりました。

自分の辛い所の治療が得意になるのは「治療家あるある」でもあります。

浅野先生は以前から言っていました。

「硬い筋肉に鍼が触れると患者さんが痛がるけど、そこで鍼をするのを止めてしまったら仕舞だわ。そこから1センチは入れないと効果がないわ。効果がないと患者さんは、あそこの鍼灸院は治らないから駄目だなと判断するでしょう。」

要するに、悪い所に的確に鍼が届かないと、病巣部に伝導した響きが無く、効果も無いということです。効かない鍼をすることは、患者さんからは勿論のことながら、結果的に鍼灸自体の信用を失う事だと思っています。

北京堂の鍼はズーンと響き、しっかり患部に効いていることを実感できる治療です。いわゆる得気と呼ばれるものです。症状が悪い患者さんほどこの響きが強烈に感じていることは、鍼が病巣部に伝導した感覚として鍼をしている側にも伝わってきます。

患者さんに良くなって頂きたいという一心で、鍼を施しています。

ですが、きつすぎる時は遠慮なくおっしゃって頂きたいと思っています。治療の主役はあくまでも患者さんであり、患者さんの良くなることが何よりも最優先だと考えているからです。